坂口恭平さん「継続するコツ」
「継続する」ということについて書かれた、すばらしい一冊だった。
何度も読み直すことになりそうだけど、初読で感じたことを書き記すことにした。
何かを始めようという時に私はすぐ、
「これを続けたらこういう自分になれるかも」
「1年続けたらこれだけの収入になるかも」
そう考えてしまう。
結果を出すため、
誰かから評価されるため、
世間のモノサシで測ったとき「いいね」と言われるため、
そんなことばかりに意識が向いてしまう。
それでもある程度は続けられる。
最初は、目標達成できた時のイメージが強く脳内にあるから。
(人参を前にぶら下げられている馬のように)
走り始めの頃は人参への憧れも強く、
体力やモチベーションも湧いてくる。
けれど、短距離走にようにハイペースで走っているうちに気づいてしまう。
「ここまで走れば、ここまで継続すれば、この人参を食べられますよ」
そんな保証はどこにも存在しないことに。
むしろ食べられないことがほとんどであり、
食べられるとしても、それは5年後、10年後、もっと先だと。
その時に一気に落胆し、
「こんなことやっても無意味だ。一文にもならない」
と辞めてしまうのが私であり、典型的なゼロ100人間なのだと思う。
そんな私にとって本書はこの上ない処方箋だった。
継続することにおいて大事なのは、
「行為自体を楽しむこと」
ブログなら、文章を書くことそのものを楽しむ。
(いつか1000記事になって収益化、俺はブロガーになる!とか考えない)
筋トレなら、トレーニングそのものを、筋肉に負荷をかけることそのものを楽しむ。
(それによって痩せるとか、魅力的なボディになるとか考えない)
そもそも楽しいからこそ、選んだはず。
楽しいことをただ毎日やっているだけ。そんな感じが良い。
別に毎日じゃなくたって良い。気が向かない時はやらない。
飽きたら一度やめてみたっていい。1週間後、数ヶ月後に再開しても良いのだ。
「飽きたらやめていい」…そもそも「飽き」とはなんだろうか?
その問いにたいしても、著者の坂口さんは非常に鋭く書かれている。
「飽き」つまり「退屈」とは「慣れ」であり、
「慣れ」とは「上手くなる」ことで生まれる。
そう書いておられる。これはかなり衝撃的だった。
「継続」の障壁となる「飽きる」という感覚は、
「継続することで必ず発生するもの」なのだ。
なんというパラドックス。(健康に気を遣いすぎてそれがストレスとなり病気になる、それにも通じる)
どんな苦手な仕事だって、週5日出勤して1日8時間やっていれば、
必ず慣れて、上手くなり、いずれ退屈を感じるようになる。
仕事の場合、生活のために金銭を稼ぐことが基本にあり、
退屈だからってすぐ辞めるという人は少ない。
その退屈を、サボりに当てたり、余剰エネルギーを趣味に注いだりして
仕事自体はぼちぼち続けるだろう。
けれど趣味とか、自分のやりたいことを継続するとなると、話が違ってくる。
自分は継続したいのに、継続するために毎日1時間なり、スケジュールを調整して、集中しているのに、
それを続ければ続けるほど、上手くなり、慣れていき、
「飽き」という「継続を邪魔するもの」が増幅していくのだから!
そんな「飽き」にどう向き合えば良いのか?
「毎回毎回、新鮮な気持ちで取り組む?」
「常に新たな発見ができるよう感度をあげる?」
そんな曖昧な意識づけでは足りないのだと思う。
なぜなら、
続ける → 慣れる → 上手くなる → 飽きる
この流れはもはや宇宙の摂理と言っても言い過ぎではないから。
その摂理に立ち向かうためにいろんな工夫が必要なのだ。
例えば、
できる限り毎回違うものを作ってみる(同じようなものを作らない)
書くことなら、今回は書評、次は日記、その次は短編小説…というふうに、
とにかく同じジャンルの中でも、細分化し、別のカテゴリーにその都度挑戦してみる。
身の回りの空間、環境を変えるのも良い。
今日はデスクで、明日はキッチンテーブル、明後日はカフェやワーキングスペースに行ってみよう、そんな感じ。
(井上雄彦さんは漫画のネーム書くのにカフェを5軒くらい梯子していたらしい)
そもそも継続することを1つに絞る必要すらない。
(日本って妙に、「この道一筋、何十年」みたいな、ストイックに一つのことに没頭することを評価されやすい傾向にあると思う。もちろん素晴らしいことは間違いないのだが)
継続しようと思うものが、3つくらいあれば、ローテーションしながらそれぞれを同時進行すれば良い。スピードは遅くとも。
3つのうち2つが途中でストップしてても、残り1つが継続できていれば、そのうち止まっている2つも動き出すかもしれない。綱渡りのように。
そして、完璧なものを作ろうとしない。
一つの作品の中に「お、ここはちょっと良い感じに書けたな」という箇所がほんの一部分でもあれば大成功だと思おう。
自分への期待が高すぎるのだろう。恥ずかしいことに。
自分は素晴らしいものを作れると謎の自信を持ってしまっている。
ある意味ポジティブで良いことなのだが、それと現実の落差に落ち込んでしまっては本末転倒である。
「また駄作をインターネットの海に放り投げてしまった、、、ニヤリ」
そんな気持ちでいたいなと思った。
坂口恭平さん、お名前は知っていたけど本をちゃんと読んだのは初めてだった。
今後読み漁ることになりそう。